【マイニング#31】ETH PoW→PoS移行による報酬減少額を試算

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マイニング
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ETHは6月のアップデートによりPoSへの完全移行に近づきます。
その場合、マイナーが行っているアルトコインのPoWマイニングの報酬にどのような変化がでるか簡単にエンジニアっぽく検討してみようと思います。

今回の検討は、1/23(日) 現在の試算になります。

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ETHのPoW→PoSへ移行すると何が起きるか

色んな事が起きますが、マイナー目線で書きますね。

ETHから他のアルトコインのPoWマイニングに移行

PoWでイーサリアムのマイニングができなくなるので、他のアルトコインマイニングにマイナーが移動します。下に図示しますが、ETH以外のRVN、FLUXといったPoWによるブロック生成を行っている通貨にグラボ等のマイニングマシーンが移動します。

ネットワークのハッシュレート増加→報酬減少

マイニングマシーンが移動すると、
他のアルトコインのハッシューレートが増加→ディフィカルティ増加→報酬が減少
といった流れを引き起こします。
このままではマイニングのメリットが薄まります。マイナーにとってはダメージが大きいです。

そこで、このダメージの量をイメージしたいと思いました。
ETHのハッシュレートが他のアルトコインに流れ込むことによってどの程度影響があるか、収益がどう変化するか、試算してみようと思います。

試算方法

以下の手法で行います。

  1. ETHのネットワークハッシュレートをRTX3060 何個分か換算
  2. 算出したRTX3060の数量だけ他のアルトコインへ振り分け
    ※この時の振り分け方はハッシュレートが均等に増幅するように振分。報酬が均等になるように。
  3. 振り分け後のハッシュレート増加比から減少する報酬を算出

1.ETHのネットワークハッシュレートをRTX3060 何個分か換算

ネットワークのハッシュレートをそのまま他アルトコインに振り分けようとも思いましたが、ETHと他のアルトコインではアルゴリズムも違うし、ハッシュレートの単位も異なるので一度グラボに換算します。
RTX3060としているのは私が愛用しているため、他のアルトコインやETHのハッシュレートなどのデータが揃っているからです。

2.算出したRTX3060の数量だけ他のアルトコインへ振り分け

RTX3060 の数量がでたら、他のアルトコインに振り分けます。この時、RTX3060を均等に振り分けると一部のアルトコインだけ極端に増加したり、微増したりします。これでは報酬が激減する通貨と、微減する通貨が生じます。
マイナーの心理から報酬が多い通貨に集まるのは目に見えるので、RTX3060の振り分け方法はハッシュレート増加比率が均等(報酬が均等)になるように振り分けます。

3.振り分け後のハッシュレート増加比から減少する報酬を算出

2.で均等に割り振りした際にハッシュレートの増加比がわかるので、その増加比を用いて、現在の報酬から割り算します。※ハッシュレートとディフィカルティは比例し、報酬とディフィカルティは反比例するので。

前提条件

  • 現在のハッシュレート・報酬・通貨価格は1/23 12:00現在 『minerstat』より参照
  • 電気代は0.2ドル/kWh
  • 通貨の価格は現在時点の価格で検証し、PoS移行時の価格については考慮しない
  • 対象のアルトコインは『RVN』『ERG』『FLUX』『CFX』『SERO』『TONCOIN』『ALPH』
  • ETHのネットワークハッシュレート全てがアルトコインのハッシュレート増加に使われる

ETHのネットワークのハッシュレートについて

通貨 ETH
ネットワークハッシュレート 938 TH/s
RTX3060換算 25.8 M個分

※RTX3060 LHR V2 1個あたり 36.3MH/sとして計算

RTX3060グラボに換算すると2,500万個以上がマイニングに使われていることがわかります。

アルトコインへの振り分けについて

ちょっと難しいですが、、、ハッシュレートの増加を均等にするには、各アルトコインのハッシュレート比を出し、その比率分をETHから振り分ければOKです。ですが、各コインのアルゴリズムも異なりますし、ハッシュレートの単位も異なるので、ここでもRTX3060に換算して、比率を出します。

以下表がRTX3060換算し、合計して1になるようにRTX3060による構成比率を示した表になります。

通貨 RVN ERG FLUX CFX SERO TON ALPH
ハッシュレート 4.96
TH/s
14.2
TH/s
2.46
MS/s
1.83
TH/s
45.3
GH/s
1.15
PH/s
28.1
TH/s
RTX3060換算 208K個 119K個 61K個 40K個 2K個 653K個 31K個
RTX3060比率 0.187 0.107 0.555 0.036 0.002 0.585 0.028

※ RTX3060 LHR V2 1個あたり のハッシュレートは私のMiningSet記事を参照。

RTX3060へ換算した比率がでました。この比率分だけ、ETHのネットワークハッシュレート分のRTX3060 2,580万個分(25.8M個)を振り分けます。

以下表に、振り分けによって上昇するハッシュレートと、ハッシュレートの上昇比率を示します。

通貨 RVN ERG FLUX CFX SERO TON ALPH
RTX3060振分数(M個) 4.82 2.76 1.43
0.93 0.048 15.1 0.731
RTX3060換算総数(M個) 5.02 2.88 1.50 0.97 0.05 15.77 0.76
振り分け後
総ハッシュレート
119
TH/s
342
TH/s
59.4
MS/s
44.1
TH/s
1.09
TH/s
 27.8
PH/s
678
TH/s 
現在の
ハッシュレート
4.96
TH/s
14.2
TH/s
2.46
MS/s
1.83
TH/s
45.3
GH/s
1.15
PH/s
28.1
TH/s
ハッシュレート比 24.13

綺麗に振り分けできる前提ですが、今回の試算条件ではETHがPoS移行することにより他のアルトコインのハッシュレートは24倍に膨れ上がることがわかります。

試算結果:減少する報酬の試算予測

ハッシュレートが24倍に膨れ上がるので、ディフィカルティも24倍になります。
報酬は単純に$\frac{1}{24}$になるわけではないと思いますが、大体の試算としては問題ないので現在の報酬から $\frac{1}{24}$ 倍した結果を示します。

通貨 RVN ERG FLUX CFX SERO TON ALPH
現在報酬/日($) 1.23 1.23 0.68 1.53 1.42 1.37 1.54
試算報酬/日($) 0.05 0.05 0.02 0.06 0.06 0.06 0.06
電気代($) 0.62 0.62 0.65 0.67 0.6 0.65 0.48
試算損益/日($) -0.57 -0.57 -0.62 -0.61 -0.54 -0.59 -0.42

※報酬はRTX3060 LHR V2 で算出

報酬もかなり減って、電気代よりも減ってしまうことがわかります。
今回の試算では損益が赤字になりえることがわかりました。

考察:実際には起こりうるが、検討できていないこと

今回の試算では以下の事が考慮できていないので留意が必要です。

1.ETHのネットワークハッシュがそのまま移行することはない
 実際にはグラボを売却するマイナーが現れると思います。その割合がどの程度かわかりませんが、その分全体のハッシュレートは下がるので、ここまで報酬は下がらないかもしれません。

2.他のアルトコインが考慮できていない
 ETHのネットワークハッシュレートの流入先を7つのアルトコインに限定してますが、他にもPoWの通貨はありますし、新しくTONCOINやALPHのようにPoWの通貨が出てくることもあると思います。その通貨にもハッシュレートは流れ込むはずなので、今回のように24倍といったハッシュレートの増加はありえないかもしれません。現状は他のアルトコインは知っているもので『ZANO』『TUBE』『FIRO』『AE』『ETC』『AION』『BEAM』『QKC』『CTXC』があります。
 しかし、マイニング市場で比較的利益率が高い7つの市場を持ってきているので、、、新しい期待できる通貨が出てこないと厳しいと思います。

3.アルトコインの価格上昇と電気代の上昇
 ハッシュレートが流入すれば信頼性が増すため、アルトコインの価格が上昇する可能性があります。とはいえ、逆に電気代が高くなることも十分にありえます。原材料が高騰している現状と、カーボンニュートラルの時代に電気を消費するマイニングはSDGsの観点から好ましくありません。価格上昇のメリットもありますが、PoWマイニングのリスクは高まると思います。

4.複数のマイニングマシーンの特徴を反映できていない
 マイニングマシーンにも色々あります。得意・不得意なアルゴリズムもあるようです。今回はRTX3060のみで筆者の都合です。マイニング市場にどのマイニングマシーンの割合が多いかを検討した方がより正確ですが、今回は簡単に試算するためにそこまで見れておりません。

5.総ハッシュレートの増加
 マイニングソフトの向上、マイニングマシーンの高性能化、新規参入などの要素もあると思います。これらによりさらに報酬が下がる可能性があります。

まとめ

検討できていない項目もありますが、今回の試算の結果か言えることは以下の通りです。

  • ETHのPoS完全移行後すべてのハッシュレートが7つのアルトコインに流入すると、ハッシュレートが24倍近くに増加する。
  • 今回のケースでは報酬は$\frac{1}{24}$になり、電気代よりも小さくなるためマイニングは赤字になる。
  • マイニングが赤字になるなら現金で仮想通貨を買った方がお得

以上です。非検討項目もあるため完全に事実と一致するわけではないですが、どの程度報酬が減りそうか傾向を示すことはできたと思います。

最後に、、、

今回の記事を書こうと思ったきっかけは、『ETHがPoS移行してもETH以外のPoWマイニングでマイナーは延命できる』というのをどこかでみたので、ほんまか?と思ったので試算してみたのと、、、

他のマイナーに向けて、『単純試算だけどこういう考えもあって、結構リスクあるんじゃない?』という事が言いたかったのです。
もし、このあたり違うんじゃないの?というところがあればご指摘いただければと思います。

この試算を見ると、利益を出すためにマイニングをしているならさっさとグラボ等は価格が高いうちに手放した方がいいと思います。
ETHのディフィカルティボムが延期する可能性もありますが、、、その場合、PoWが続いても、おそらくETH価格が減少し収入が減ると思います。昨今の暗号資産市場の著しい成長の中でのETH開発の計画遅れは、投資家からの信用は無くなり、他のレイヤー1の通貨である『SOL』や『LUNA』『AVAX』などの資金が移ることは目に見えます。

また、私は今後もマイニングをネタに記事を書き続けるためにマイニングマシーンはまだ保有する予定です。折角ノウハウ蓄えたので簡単に手放さなくてもいいかなと思っているので。
ただし、PoSや暗号資産の運用をメインに力を入れていく予定です。
消費電力が大きいPoW形式は環境的・経済的な観点では魅力がないですからね。PoSが主流になるのは必然だと思っています。

以上。

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